- SES(System Engineering Service)って何だろう?
- エンジニアとして、SESで働くメリット・デメリットってどんなものがあるだろう?
- SES事業を行う上で、失敗しないために大事なことはなんだろう?
IT業界でよく耳にするSES。
SESとはどういうものなのか?SES企業でエンジニアとして働いてよいものか、疑問に思っている方も多いと思います。
システムに関する業務を行うにあたって、契約形態は以下のようなさまざまなものがあるので、わかりづらいですよね。
契約形態の種類
- 準委任契約(SES含む)
- 請負契約
- 派遣契約
そこで、本記事では以下のような流れで、SESに関する情報をわかりやすくお伝えしていきます。
本記事で解説する内容
- SESの基礎知識
- SESとはなんなのか
- ほかの契約形態との違い
- SES企業で働くための情報
- SESのメリット・デメリット
- SESの年収
- 失敗しないSES企業の選び方
- SES事業を成功するための情報
- SES事業のメリット・デメリット
本題に入る前に、まず一つ質問です。
「SESにどのようなイメージを持っているでしょうか?」
・・・中には、「SESは闇が深そう…」「SESに就職(転職)しようとしたらやめとけと言われた…」などネガティブなイメージを持っている方も多いかと思います。
それはなぜか?その答えは明確です。
SESの事業形態上、企業が利益を出しやすいため、さまざまな企業がSES事業へ参入しています。
2021年12月現在には1万社以上の企業がSES事業を行っていると言われています。
そのため、エンジニアのことをしっかり考えてくれる企業もあれば、自社の利益しか考えない企業もあるのはイメージつくでしょう。
その結果、以下のような事態に陥ることがあります。
注意点
- スキルに合わない案件に入れられる
- いろいろな案件をたらいまわしにされてしまう
- 働いていてもスキルアップしていかない
しかし、SES=必ず上記のような事態、というわけではありません。
さらに、悪質的な事業を行う企業はどんどん淘汰されてきているので、SESで働くメリットも大きくなってきました。
特にSESは以下の点でメリットがあり、エンジニアにとっても企業にとっても、非常によいサービスといえます。
SESのメリット
- エンジニアとしてのメリット
-
- 未経験からでもエンジニアになりやすい
- さまざまな案件で経験を積める
- 自社だけでなくIT業界を中心とした人脈が広がる
-
- 企業としてのメリット
-
- 自社開発などよりも利益率が高い
- 採用コストや教育コストがかからない
- 成果物など作業の責任がない
-
※本記事の下部へジャンプします
ただし、なにも考えずにSESに参入するとエンジニアも企業も失敗してしまいます。
なので、失敗しないために大事なことを本記事でしっかりお伝えします。
それでは、前置きは以上として一つひとつ見ていきましょう。
本記事は、SIerで4年・フリーランスとしてSESで5年間SEをやってきたミツキが解説します。
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SESとは
それでは、まずSESとはなんなのかについて、基本的なところを見ていきましょう。
SESはSystem Engineering Serviceの略
SESは、System Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)の略です。
クライアントにエンジニアの技術力・労働力を提供する契約形態のことを指します。
契約の一般的な正式名称は「準委任契約」です。
エンジニアをクライアント先に派遣する形となるので、エンジニアは客先常駐で仕事をすることとなります。
なお、ここでいうクライアントはエンドユーザーではなく、システム会社がほとんどです。
SESでのエンジニアの仕事内容
SESで働くエンジニアの仕事内容は、システムやソフトウェアの開発から運用保守までと多岐に渡ります。
いわゆる上流工程に携わることもあれば、下流工程に携わることも。
どの工程・仕事に携わるかは、以下の要素などにより変わってきます。
ポイント
- エンジニアの技術力
- SES企業の大きさ・信頼度
- SES企業の上位会社の大きさ・信頼度
また、参画する案件の大きさによって、一人で入ることもあれば同じ会社から複数人で参画することもあります。
わかりやすくイメージで表すと、以下の画像の通りです。
ここまで読んでいただいて、「派遣と同じ?」と疑問を持たれる方もいるかと思います。
なので、次に各契約形態との違いについて見ていきましょう。
SESと各契約形態との違い
ここでは、主に以下3つの契約形態との違いについて見ていきます。
ポイント
- 派遣契約
- 請負契約
- 委任契約
SESは準委任契約
各契約形態との違いを見る前におさえておくべき点として、上記ですでにお伝えした通り、SESは準委任契約です。
準委任契約とは、民放第656条で定められており、「発注者(委任者)が、法律行為以外の実務を受注者に依頼するタイプの契約」のことを指します。
特徴をまとめると以下の通りです。
準委任契約の特徴
- 契約時間に基づいて作業を遂行する
- 仕事の完成や成果物に対する義務はない
成果物に義務はないものの、実情としては決められたところまで終わらせないと信頼問題につながります。
なので、あらかじめ決めておいたところまで仕事を遂行するのが通常です。
派遣契約との違い
派遣契約は、あらかじめ決められた契約時間を働くという意味では、準委任契約と同じです。
大きな違いは「指揮命令を誰が行うか」です。
準委任契約と派遣契約の指揮命令が行う人は以下の通りとなります。
指揮命令を行う人
- 派遣契約:労働者は、派遣元の指示で作業を行う
- 準委任契約:労働者は、所属の雇用者の指示で作業を行う(クライアントから細かな作業指示はできない)
準委任契約の場合、成果物もなくクライアントからの細かい指示もありません。
そのため、月末などに作成する作業報告書の提出をもって業務がしっかり遂行されたかの判断となります。
請負契約との違い
次に請負契約との違いについて見ていきます。
請負契約と準委任契約は、指揮命令が雇用元(SES企業)にある点においては同じです。
違うのは、請負契約は「労働力ではなく成果物に対して報酬を払う」という点です。
委任契約との違い
最後に、委任契約との違いです。
委任契約は、「発注者(委任者)が、法律行為の実務を受注者に依頼するタイプの契約」を指します。
要するに、準委任契約と委任契約との違いは、法律行為であるか否かという点です。
エンジニアの業務は、法律行為ではないので、エンジニアには無関係の話となります。
ここまで解説した各契約形態の違いについて、表で表すと以下の通りです。
契約形態 | 提供するもの | 指揮命令する人 |
---|---|---|
SES契約(準委任契約) | 労働力 | SES企業(派遣元企業) |
派遣契約 | 労働力 | 派遣先のクライアント |
請負契約 | 成果物 | SES企業(派遣元企業) |
委任契約 | 労働力 ※法律行為 |
派遣元企業 |
SESとその他事業形態との違い
上記では、契約形態での違いについて見てきました。
次に事業形態としてのSESと、その他の形態について見ていきましょう。
SESの事業形態
まず、SESの事業形態についてです。
既に何度も解説をしている通り、SESの事業形態の特徴は以下の通りとなります。
SESの事業形態
- クライアントに技術力・労働力を提供して業務を行う
- 成果物や仕事の完成に対しての義務はない
事業にフォーカスして、関係者を表したのが以下の図です。
SIerとの違い
それでは、SIerとの違いについて見ていきましょう。
そもそもSIerとは、クライアントに対してシステム・ソフトウェアの導入から運用保守まで幅広い業務を行う企業を言います。
中には、最適なシステム・ソフトウェアの導入をするために、コンサルティングを行うことも多いです。
そのため、まずクライアントから求められるものとして、SESと以下の違いがあります。
クライアントから求められるものの違い
- SES:システムやソフトウェアの開発・保守運用の作業クオリティの高さ
- SIer:クライアントのニーズをしっかり理解し、チームを統制してプロジェクトを滞りなく進める力
割合として、上流工程の仕事を担うことが多いのがSIer、下流工程の仕事を担うのがSESというイメージです。
既に感づいた方もいるかと思いますが、SESはSIerに派遣されることも多くあります。
実際に僕も、SIerに派遣されていたこともありましたし、SIerで働いていた時はSES企業から派遣されてきた方もいました。
自社開発との違い
次に自社開発との違いについて見ていきましょう。
自社開発は、自社でシステム・ソフトウェア開発を行う企業です。
SESとの違いは明らかですが、改めて違いをまとめると以下の通りです。
SESと自社開発の違い
- SES:労働力・技術力を提供することで売上になる
- 自社開発:開発したシステム・ソフトウェアの売上によって事業が成り立つ
自社開発は、一度開発してしまえばランニングコストは少なくなりますが、初期コストはかなり大きくなります。
また、開発したシステム・ソフトウェアが予想通り売れるかどうかわかりません。
よって、確実な収益性という面で考えると、SESの方がいいと言えます。
受託開発との違い
事業形態の最後として、受託開発との違いを見ていきます。
受託開発は上記で挙げた契約形態のうち、「請負契約」にあたります。
要するに、報酬の対価は以下の通りです。
SESと受託開発の違い
- SES:労働力・技術力に対する決められた時間での契約
- 受託開発:依頼されたシステム・ソフトウェアなどの成果物
受注した仕事をしっかりこなせば、どちらも問題なく売上を上げることが可能です。
しかし、受託開発は納品する成果物あってのことです。
成果物に満足してもらえない場合やそもそも完成しないと売上になりません。
ここまでの事業形態による違いをまとめると以下の通りです。
事業形態 | 報酬をあげるための条件 | 売上の安定度 |
---|---|---|
SES | 労働力 | エンジニアにマッチする案件があれば継続的に売上があがる |
SIer | 成果物 | ひとつ案件が受注できれば大きな売上につながることが多い |
自社開発 | 成果物の販売 | 開発したシステム・ソフトウェアを安定的に売り上げる必要がある |
受託開発 | 成果物 | 依頼された成果物を作れれば売上があがる |
SESで働くエンジニアの年収
ここまで、SESの基礎知識について解説してきました。
SESで働こうと迷っているエンジニアの方は、どれくらい稼げるのか気になるかと思います。
そこでここでは、SESで働くエンジニアの年収にフォーカスしていきます。
正社員とフリーランスで当然収入が変わってくるので、それぞれ見ていきましょう。
正社員の場合
まずは、正社員の場合です。
正社員エンジニアとしてSES企業で働く場合の年収はおおよそ以下となります。
SES企業の正社員エンジニアの年収
- 1年目:300万円前後
- 3年目:350万円前後
- 5年目:400万円前後
- 7年目:450万円前後
- 10年目~:500万円前後
当然、企業によって変わってくるので目安の年収です。
大企業なら5年目くらいで年収500万円を超えることもありますし、逆に10年目でも年収400万円に満たない場合もあります。
フリーランスの場合
次にフリーランスの場合の年収についてです。
フリーランスは年数ももちろんですが、それ以上にどんなことができるかが収入に大きく影響してきます。
なので、フリーランス案件を無作為に385件抜粋し、職種別に月の平均収入を算出しました。
その結果は以下の通りです。
職種 | 月商平均 | 対象案件数 |
---|---|---|
PM | 873,300円 | 28件 |
インフラ | 808,750円 | 40件 |
サーバーサイド | 785,525円 | 187件 |
セキュリティ | 778,571円 | 7件 |
フロントエンド | 769,940円 | 161件 |
アプリエンジニア | 768,740円 | 40件 |
ディレクター | 752,314円 | 14件 |
データベース | 724,667円 | 15件 |
デザイナー | 669,683円 | 24件 |
※複数の職種に該当する案件は、それぞれに含めています。
ちなみに上記の収入は、SES企業がクライアントからもらう金額です。
実際にエンジニアがもらう月収は10%~20%引いた額です。
10%~20%は企業がマージンとして取る部分で、企業によってマージン率は変わります。
マージン率が15%だった時の例
マージン率が15%だった場合、エンジニアがもらう月収(年収)は以下の通りです。
職種 | 月収 | 年収 |
---|---|---|
PM | 742,305円 | 8,907,660円 |
インフラ | 687,438円 | 8,249,250円 |
サーバーサイド | 667,696円 | 8,012,355円 |
セキュリティ | 661,785円 | 7,941,424円 |
フロントエンド | 654,449円 | 7,853,388円 |
アプリエンジニア | 653,429円 | 7,841,148円 |
ディレクター | 639,467円 | 7,673,603円 |
データベース | 615,967円 | 7,391,603円 |
デザイナー | 569,231円 | 6,830,767円 |
なお、SES企業から見るとクライアントとはSES契約となりますが、エンジニアはSES契約にはなりません。
SES企業と業務委託契約を結んで仕事をする形となるので、SES企業と交わした契約内容に基づいた作業を遂行する必要があります。
確定申告などの事務作業をご自身でやる必要がある分手間がありますが、20代でも年収700~800万円稼いでいる方も多くいます。
エンジニア側のSESのメリット・デメリット
次に、収入だけでなくエンジニアがSESで働くメリットとデメリットについて見ていきましょう。
エンジニアに魅力的なメリット
まずはメリットから見ていきます。
メリットとして挙げるのは、以下の7つです。
メリット
- 未経験でもエンジニアになれる
- 大きな案件に関われる
- 不要な残業が少ない
- 幅広いスキルが磨ける
- さまざまな案件に携われる
- 人脈が広がる
- 職場環境にあきづらい
一つひとつ解説していきます。
メリット1.未経験でもエンジニアになれる
ひとつ目のメリットは、未経験でもエンジニアになれる点です。
近年、エンジニアの需要が高まっており、エンジニアになりたい方も多くなりました。
経済産業省が公表する統計では、2030年には79万人エンジニアが不足する可能性があります。(IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果参照)
しかし、未経験からエンジニアになるにあたって、いきなり自社開発や受託開発の会社に入るのは少しハードルが高いです。
そんな時に入りやすいのがSESです。
既に解説をした通り、SESは以下の特徴があるので未経験の方でも仕事が回ってくる可能性があります。
ポイント
- 開発から運用保守までさまざまな案件がある
- 中にはサポート業務のようなものもある
- 成果物が必要ない(労働力・技術力の提供)
そのため、エンジニアになるために開設されている多くのプログラミングスクールでも、斡旋してくれる転職先はSESが多い傾向にあります。
しっかりキャリアステップを考える必要がありますが、全くエンジニア経験がないままキャリアを考えるのと経験をした状態でキャリアを考えるのが全然違います。
エンジニアになる第一ステップとして、SESを活用するのもいいでしょう。
※オススメのプログラミングスクールについては、以下の記事を参考にしてみてください。
メリット2.大きな案件に関われる
続いてのメリットは、大きな案件に関われる点です。
参入する案件によりますが、上場している大企業や数億円規模のシステムに関するプロジェクトに入れる可能性があります。
大きな案件に関われると以下のようなメリットがあります。
メリット
- 大きな案件に関わった実績として、今後の選考などに活かせる
- システムの導入・運用保守の全体像をつかみやすい
- 仕事ができる人が多くいて、仕事術など勉強になる点が多い
逆にデメリットとして、「駒」になりやすい点が挙げられます。
なので、しっかりとスキルアップしていきたいのであれば、学ぶ取る姿勢が非常に重要です。
メリット3.不要な残業が少ない
続いては、不要な残業が少ないという点です。
SESは、あらかじめ月の稼働時間を決めて、労働力を提供する仕事のスタイルです。
フルタイムで稼働する案件であれば、月の稼働時間は140~180時間というような感じで定められています。
※システム障害などあれば残業が増える可能性があります。
基本180時間に収まるように働くので、残業時間としては20時間が上限です。
残業時間が少なければ、プライベートやスキルアップの学習などの時間に充てられるので、いいですよね。
メリット4.さまざまな案件に携われる
次に4つ目のメリットは、さまざまな案件に携われることです。
既に解説した通り、SESは開発から運用保守までさまざまな業務があります。
また、長期で参画する場合もありますが、数カ月~のサイクルでいろいろな案件に入ることも珍しくありません。
そのため、必須のスキルさえ満たしていれば、幅広い案件に参画できます。
実際、僕が参画した案件の一例を挙げると以下の通りです。
参画した案件の例
- 銀行システム(VB.Netを使用)の運用保守
- マーケティング会社での業務支援ツール(Excel VBA、VB.Net)の開発
- 大手IT企業の業務システムの運用改善(Excel VBAにてツール開発)
基本VB・VBAをベースとした案件ですが、さまざまな業務に携われました。
大小さまざまな案件があるので、目的に合った案件に参画することが重要です。
メリット5.幅広いスキルが磨ける
5つ目のメリットは、幅広いスキルが磨ける点です。
ひとつ前のメリットで挙げた通り、SESで参入する案件は幅広くいろいろな業務があります。
共通する業務やスキルもありますが、付随して各案件で固有のスキルが必要な業務も当然発生します。
Web制作の案件を例にすると、HTML/CSSやJavaScriptなどの基礎スキルを前提として、以下のように幅広いスキルが必要となります。
Web制作の案件で必要なスキル例
- ポータルサイトの制作:高性能な検索機能の実装
- ECサイトの制作:決済機能の実装
- WordPressサイトの制作:WordPress(CMS)の操作方法
しっかりキャリアを考えて参画する案件を選択すれば、十分スキルアップすることが可能です。
メリット6.人脈が広がる
人脈が広がりやすい点もメリットのひとつです。
4つ目に挙げたように、さまざまな案件に携われるので、その分多くの人と知り合う機会があります。
SIerなど社内で仕事をしていると、どうしてもエンジニアは外部の方と出会う機会がありません。
普段付き合う人が固定されると思考も固定化されてしまいがちです。
人脈が広がると新たな価値観も生まれて、成長につながるのでメリットとして大きいです。
メリット7.職場環境にあきづらい
最後のメリットは、職場環境にあきづらい点です。
同じ現場で仕事をしていて、かつ固定化された仕事内容だとあきてしまうことがあります。
既にふれた通り、SESは3か月~周期ほどで、さまざまな案件を担当することとなります。
人によっては数年の長期の場合もあるものの、現場が変わりやすいので仕事内容や人間関係などあきづらいです。
あきづらいということは、新たな刺激が不定期で訪れるので、スキルや人間的な成長につながります。
デメリット・やめとけと言われる理由
メリットとして7つ挙げました。
次にデメリット、SESはやめとけと言われる理由を解説します。
SESのデメリットとして挙げるのは以下の4つです。
デメリット
- 給料が安い
- スキルアップにつながりづらい
- 環境変化によりストレスを感じる
- 帰属意識が薄れる
一つひとつ見ていきます。
デメリット1.給料が安い
給料が安いのが一つ目のデメリットです。
既に解説した通り、SES企業の会社員の場合、年収の相場は以下のような形となります。
SES企業の正社員エンジニアの年収
- 1年目:300万円前後
- 3年目:350万円前後
- 5年目:400万円前後
- 7年目:450万円前後
- 10年目~:500万円前後
仕事量と給料が合っていればいいですが、仕事量が多いにもかかわらず給料が安いこともあります。
次に挙げるデメリットと合わせて、「どのようなキャリアを築くか」「どのようなスキルをつけていくか」が非常に重要です。
デメリット2.スキルアップにつながりづらい
幅広いスキルが磨ける一方で、広く浅くなりすぎることで、スキルアップできない人もいます。
また、よくある意見として以下があります。
- プロジェクトの最後まで関われない
- 下流工程ばかりで上流工程に関われない
- スキルアップできず、クビのリスクがある
スキルアップにつながりづらくなる原因は「本人がキャリアアップをしっかり考えていない」「会社がキャリアステップを考えてくれていない」という2つです。
確かに下流の仕事、特に誰でもできるような運用保守の仕事ばかりしていると、スキルアップしづらく将来が不安になってしまうことがあります。
ただ、しっかりとキャリアステップを考えてくれる会社で、ご自身も将来どうしたいかをしっかり考えてそのためのステップを踏んでいけば問題ありません。
デメリット3.環境変化によりストレスを感じる
「さまざまな案件に関われる」「職場環境にあきづらい」というメリットの一方、環境変化によりストレスを感じてしまう方もいます。
常駐先がコロコロ変わってしまったり現場に当たり外れがあったりするのが原因です。
特に以下のような方はストレスを感じやすいかと思います。
環境変化でストレスを感じやすい方の特徴
- 人付き合いがあまり得意ではない方
- 一つひとつの仕事を体得するのに時間がかかる方
- 自主的に行動するのが苦手な方
既に解説した通り、SESは指揮命令を下すのが所属の雇用者となります。
しかし、クライアントから命令が100%来ないとは言えません。
そのため、働いているエンジニアからすると指揮命令の所在があやふやに見えてしまうことがあります。
そういった環境下でストレスを感じてしまう方もいるでしょう。
デメリット4.帰属意識が薄れる
最後のデメリットは、帰属意識が薄れてしまう点です。
SESで働いていると所属している会社へ戻る機会があまりありません。
1カ月に1度くらいのペースで帰社日を設けている会社もありますが、それでも自分がどこに所属しているか見失いやすいです。
さらに、常駐先の人間関係が悪いと仕事以前に人間関係で悩んでしまう方もいます。
帰属意識が薄くなることは仕方がない部分があります。
なので、ご自身のキャリア・人生設計を考えてベストな人間関係・選択をしていくことが重要です。
SESがオススメな方・向いている方
上記のメリットとデメリットを考慮の上、SESがオススメな方・向いている方は以下のような方です。
SESがオススメな方
- 未経験からエンジニアになりたい方
- 自身のキャリアをしっかり考える気がある方
- 環境の変化に柔軟に対応できる方
逆に、環境の変化に適応しづらい方や受け身で物事に取り組む方はSESに向いていないといえます。
SESが向いている方でも、企業選びは非常に重要です。
それでは、優良企業を選ぶにはどのようにすればよいでしょうか?
SESの優良企業の選び方
SESで優良企業を選ぶポイントはいくつかあります。
ここでは、SESの優良企業を選ぶ5つの重要なポイントを紹介します。
SES優良企業の選び方
- 会社の基盤が安定している
- 案件が充実している
- キャリアステップを考えてくれる
- 評価制度が充実している
- 働いているエンジニアが活き活きしている
一つひとつ見ていきましょう。
選び方1.会社の基盤が安定している
一番に見るべきは、会社基盤の安定性です。
なぜなら、会社基盤が安定していないと、以下のようなことにつながる可能性があるからです。
デメリット
- 従業員をないがしろにして会社の利益を優先してしまう
- エンジニアのキャリアステップを考える余裕がない
- 社員の教育をする余裕がない
上記は一例ですが、経営状態が安定していないことで従業員のことを後回しにしてしまうことにつながります。
上場している場合はIR情報まで確認するのがいいですが、右肩上がりに事業が成長しているか確認するといいでしょう。
選び方2.案件が充実している
案件の充実さは、確認する人が多いかと思います。
当然ですが、案件が充実している方があなたの理想が叶う仕事ができる可能性が高いです。
選択肢が10個と100個では、全然違います。
次に挙げるキャリアステップを考える上でも選択肢が多いのが大事です。
選び方3.キャリアステップを考えてくれる
エンジニアにとって、キャリアステップは非常に重要です。
キャリアステップに合わせたキャリアを築いていかないと、市場価値を上げづらく将来的な収入にも大きく影響してきます。
そのため、ご自身でキャリアステップを考えることも大事ですが、会社側がしっかり考えてくれるかも大事です。
相談に乗ってもらえるのはもちろんのこと、キャリアステップに合わせた仕事につかせてもらいやすくなります。
会社に入って終わりでなく、大事なのはどのような時間を過ごすかです。
キャリアを築きやすい会社を選ぶようにしましょう。
選び方4.評価制度が充実している
続いて、評価制度の充実さです。
十分な仕事ができているのにも関わらず、評価がされず給料にも反映されなかったら悲しいですよね。
会社によって評価制度は様々なので、正当に評価されるかも会社次第です。
評価制度は以下のようなものがあります。
評価制度の種類
- 目標管理(MBO)
- コンピテンシー評価
- 360度評価
企業独自の評価制度を導入している場合もあるので上記がすべてではないですが、どのように評価がなされるのか確認する方がいいでしょう。
選び方5.働いているエンジニアが活き活きしている
優良企業の選び方の最後は、働いているエンジニアが活き活きしていることです。
会社に入る前に、以下のような場面でエンジニアの方と接する機会があるかと思います。
ポイント
- インターンシップ
- 会社説明会
- 採用のための各種セミナー
- 選考
会社からもあなたを入社させるか見ていますが、あなたも選ぶ立場にあります。
その会社で働くエンジニアが、明らかに疲れていたり目の奥が笑っていなかったりする場合は、避けた方がいい会社と言えるでしょう。
SESの優良企業へ就職するためには転職エージェント選びも重要です。
IT業界に強い転職エージェントは以下の記事で解説をしているので、参考にしてみてください。
会社側のメリット・デメリット
ここまでは、SESの基礎知識やエンジニア目線でのSESについて見てきました。
最後に、SES事業を展開する会社としての目線で解説していきます。
SES事業のメリット
まずは、SES事業のメリットを見ていきましょう。
メリット
- 人材育成の手間と費用の削減
- 仕様変更に対応しやすい
- 人材不足の問題解消
- 定期的な売上が見込める
- 事業縮小のリスク対策
- 人材の入れ替えが容易
- 作業責任がない
一つひとつ見ていきます。
メリット1.人材育成の手間と費用の削減
会社経営の大変なことのひとつが人材育成かと思います。
多くの企業が人材育成に手間と費用をかけています。
SESだからといって人材育成が必要ないわけではありませんが、それでもSESは人材育成のコストを削減できます。
特に自社開発と比較すると、以下のような違いがあります。
自社開発とSESの人材育成コストの違い
- 自社開発:ゼロから製品・サービスを開発することになるため、IT全般の幅広い知識が必要となる。新卒を雇って行う場合はゼロからすべてを教育しなければならない。
- SES:仕事としては、携わる業務に関する知識さえあれば成り立つ。
メリット2.仕様変更に対応しやすい
仕事を発注する側のメリットとして、仕様変更に対応しやすいという点があります。
受託開発などの契約の場合、成果物ありきで契約がなされます。
そのため、途中で仕様を変更しようと思っても、対応してもらえないのが通常です。
一方、SESの場合は成果物ではなく「作業を行うこと」が契約なので、仕様変更にも柔軟に対応できます。
メリット3.人材不足の問題解消
SESの何よりもメリットといえるのは、人材確保が容易に行える点です。
ポイント
- 不測の事態による人員の欠如
- 想定以上の工数による人材欠如
など、さまざまな要因で人材が不足することがあるかと思います。
SESは、既にスキルがあるエンジニアを確保できるので、教育なしで最短翌週からでも人材を確保できます。
よって、人材不足の問題を解消する手段として使われることもよくある話です。
メリット4.定期的な売上が見込める
SESでまずやるべきことは、エンジニアとプロジェクトのマッチングです。
逆にいうと、うまくマッチングさえできれば売上は成り立ちます。
そのため、SESは定期的な売上の見込みが立ちやすい事業です。
ただし、クライアントとエンジニアからの信頼を得るために、以下の点は留意する必要があります。
ポイント
- しっかりスキルがマッチしたエンジニアを手配すること
- 商流をしっかりと理解しておくこと
- トラブルが発生した時に迅速に対応すること
- 勤怠をしっかりと管理すること
留意すべきポイントの詳細は、後述のSES事業で失敗しないために大事なことでも詳しく解説します。
メリット5.事業縮小のリスク対策
IT企業の事業は大きく以下の3つに分かれます。
IT企業の事業
- 自社開発
- 受託開発
- SES
自社開発の売上を伸ばすには、売れる製品・サービス作りとマーケティングが重要。
受託開発は、売上の調子がいい時もあれば悪い時もあり波がある。
といった感じで、自社開発と受託開発だけだと事業縮小のリスクが付きまといます。
一方、SESはほか2つに比べると比較的売上が安定しやすい事業です。
そのため、SESで売上の軸をしっかり立てておけば、自社開発や受託開発の調子が悪い時も事業全体としては安定させられます。
メリット6.人材の入れ替えが容易
人材の入れ替えが容易なのもメリットのひとつです。
もちろん仕事内容にもよりますが、スキルマッチするエンジニアがいれば人材の入れ替えや追加は容易に行えます。
契約周りが問題なければ、最短翌日からでも人材の調整ができ、臨機応変に対応可能です。
既に解説した通り、自社開発の場合は幅広い知識が必要になるため、場合によっては案件にしっかり参入できるのは教育後となってしまいます。
SESでも案件固有の知識が必要となりますが、それでも自社開発の案件などより体得しやすいです。
メリット7.作業責任がない
メリットの最後は、作業責任がないという点です。
SESは労働力を提供する契約形態なので、納品物や完成物は特にありません。
言い換えれば作業責任がないということになります。
ただし、責任がないからと言っていい加減な仕事をしていいわけではありません。
仮にいい加減な仕事をしてしまうと、以下のような負の連鎖を生むこととなります。
- 仕事でトラブルが発生してクライアントからクレームが入る
- 契約満了で契約が終了して、案件を継続できない
- 関連する案件も受注できるはずができなくなってしまう
- アサインする案件がなくなり、エンジニアが路頭に迷ってしまう
- 結果、案件・抱えるエンジニアも減り、会社の売上が下がってしまう
次に、SES事業のデメリットについても見ていきましょう。
SES事業のデメリット
SES事業のデメリットは、以下の4つが挙げられます。
デメリット
- エンジニアの流出
- 企業情報の流出
- 契約が多重構造すぎる
- クライアントが直接業務に対しての指示ができない
一つひとつ解説していきます。
デメリット1.エンジニアの流出
ひとつ目に挙げられるデメリットは、エンジニアの流出です。
エンジニアにとって、SESは以下のようなメリットがあると挙げました。
メリット
- さまざまな案件に携われる
- 人脈が広がる
さまざまな案件で人脈が広がることで、人によっては新たな刺激をたくさん受ける方もいます。
それにより、別の会社への転職やフリーランスに転向する方も現れます。
担当していた案件は替えがきくかもしれませんが、優秀な人材が流出してしまうことも少なくありません。
デメリット2.企業情報の流出
次のデメリットは、企業情報の流出です。
NDA(機密保持契約)により、案件に携わるエンジニアから外部へ情報を漏れる心配は少ないです。
とはいえ、情報が決して漏れないとも言い切れません。
また、テレビニュースなどでセキュリティ事故も見る機会があるかと思います。
セキュリティへの危機意識は上がってきているものの、リスクがゼロではないということは頭に入れておく必要があります。
デメリット3.契約が多重構造すぎる
あらゆる事業において、シンプルな契約構造は以下のような形です。
シンプルな契約構造
- クライアント(顧客)⇔サービス提供者
しかし、SESの場合は違います。
シンプルな場合でも、以下のような契約構造となります。
- クライアント(顧客)⇔サービス提供者(ITベンダー)⇔SES企業
ただし、SES企業が人材を賄えない場合、別の企業へ更に人材を募集することとなります。
「二次請け」「三次請け」「四次請け」…と構造がどんどん深くなることも少なくありません。
そのため、契約が多重構造になることにより
- 収益が低くなってしまう
- トラブル発生時の対応が遅くなってしまう
といった問題が発生することがあります。
デメリット4.クライアントが直接業務に対しての指示ができない
最後のデメリットは、クライアント目線でのデメリットです。
SESについて解説をした通り、エンジニアへ命令できるのは雇用主です。
クライアントから直接エンジニアへ指示を出すには、派遣契約の形をとる必要があります。
業務の中で、「少し手一杯だからこの業務をやっておいてほしい…」と思った時も、クライアントから直接出せません。
仕様変更に柔軟に対応できるというメリットを挙げましたが、本当に細かい部分での柔軟性がないのがデメリットです。
まとめ
今回はSESについて解説をしてきました。
業界的にどちらかと言えばよくないイメージが強いものの、活かすも殺すも人によるかと思います。
SESでも活き活きとエンジニア生活を送っている方もいますし、逆に毎日会社に行くのが憂鬱に感じてしまう方がいるのも事実です。
前者のように、充実したエンジニア生活を送りたい方は是非本記事の内容を参考にしていただければと思います!